竺仙|浴衣(ゆかた)天保13年創業の呉服屋

あたらしい日常の着物

vol.6 着物と帯 ぴったり合うお気に入りの組み合わせを

無地感覚の紬の着物は帯あわせがしやすいのは確かですが、他には考えられない絶妙な組み合わせを見つけたいものです。
第三回目のここでは原由美子さんに“無難”に終わらない魅力的な着こなしを目指して、織の着物にあわせる帯を選んでいただきました。

▲左 紅花染め紬×琉球紅型帯
紅花染めの着物はレフ版効果もあり顔映りを明るく見せてくれます。
琉球紅型のあざやかな色取りが紅花染の優しい明るさを華やかにまとめます。

▲右 紅花染め紬×紫根染め名古屋帯
「変わった地紋の織り方に特徴がある個性的な紬の着物。
紫根染めは伝統的な紫色のしぼり染めですが、連続模様なので
ニュアンスのある個性的な着物にあわせると、味わい深い、又とない組み合わせに。
贅沢な普段着といったところ。心惹かれたら、ぜひこういう組み合わせにチャレンジしてほしい」と原さん。
「その時は着物も帯も強い印象なので帯揚げはすっと馴染む色。帯締めは好みの色をきかせて。」

▲左 草木染めの格子柄の紬×越後型染名古屋帯
「格子の着物の水色の濃い色と帯の差し色の青が同じ。
最初は濃い色の八掛をつけて袷に仕立て、黒っぽい帯を締めてかっこよく着てみては。」
「単衣にも向きそうな生地なので、袷に飽きたら八掛無しの単衣にして、夏前と秋の始めに楽しむこともできそう。
そうやって”長く楽しむお気に入り着物”にしてほしい」と原さん。

▲右 桜染の紬×鱗柄の博多帯
草木染のシックな着物。無地感覚の着物ならではの”この一本”を探してみます。
大胆な柄で格も感じさせる鱗柄の博多帯。着物に帯をのせてみると、両方のかっこよさが引き立ちます。

原さんは「なんにでも合う着物、なんにでも合う帯を持つのではなく、この着物とこの帯の組み合わせ・・にもっとこだわって、
ぴったり合うものを捜す時間と労力を惜しまないでほしい。それが着物をより好きになって、ずっと着物を着続けることに繋がる」
といいます。
好きな着物と帯があったらその組み合わせで何度も着こんでいき、着る度に自分と馴染ませ似合わせていく、という楽しみもあります。
「無難なものにせずに、自分に愛着のある着物と帯を選ぶと、毎回同じ組み合わせで着ていても私の場合は飽きることはない」
とおっしゃっていました。

3回に亘って原由美子さんにお話しを伺いました。
最後に、最近の原さんの着物の装いをご紹介します。

昨年11月始め、灯屋さん主宰の浦野理一さんのきもの展にて。
この後、デザイナーの若山嘉代子さんと一緒に歌舞伎座へ、という日のスナップ

『藍染の小紋は明るい青が私には強すぎるかなと最初は思いましたがベージュ地の名古屋帯の質感がしっくりまとめてくれました。
知人から譲られた着物に手持ちの帯がうまく調和しました』

その日の若山嘉代子さんの着こなし

『竺仙の市松の江戸小紋に秋草の唐織名古屋帯の組み合わせ。帯揚げと帯締めの色がきいて、キリッとした中に優雅さが感じられます。』

11月の終わりに赤坂の料亭でひらかれた、秋の味覚を楽しむちょっと贅沢な催しでの着物。同じくデザイナー若山嘉代子さんと。

『いつもは青海波の袋帯で礼装として着る訪問着ですが、たまたま手に入れたつづれの源氏香の帯と地色が同じだったので洋感覚ですっきりさせてドレスダウンしてみました。時には訪問着をこんな風に軽い気分で着るのもいいものだと思ったのですが。』

『左の若山さんの着物は竺仙の高砂染小紋。角通しと亀甲の格調高い柄。重めの帯が引き締め役になっています。』

新しい日常。まだ気の抜けない日々が続きます。その日常生活に気楽に着物を着ることで少し楽しみをプラスしてみませんか?

*紅花染め着物 新田製

vol.5 江戸小紋の帯あわせと色

引き続きスタイリスト原由美子さんに、着物と帯合わせについてお話を伺っています。

「遠目には無地にみえるほど細かい柄の江戸小紋は、日常に着る衣類の紋様として世界的にみても珍しいといえます。
細かな柄によって色無地とは異なるニュアンスが生まれ、着た時には奥行きが出て顔映りが良くなるのも魅力」と原さんはおっしゃいます。

その原さんに竺仙においでいただき、江戸小紋と相性の良い帯を選んでいただきました。

▲高砂染め市松柄の江戸小紋×手描き更紗帯
一つの柄を染めた上に別の柄を重ねて染めることを高砂染めといいます。
こちらは角通し小紋と市松の柄を重ねて染めています。
そのため、「市松でありながら柄がはっきりしすぎることがなく、優しさのある柄。」と原さん。
「グレーと赤の組み合わせ。これは和洋問わず鉄板の色合わせのひとつ。
若い人もグレーは似合うので、VOL.4で紹介したモダンな赤の琉球紅型帯や、この更紗のような染帯でラフに着るのも良い。
また黒に金の入ったすっきりした袋帯をすれば粋に格調高く。」

▲左 麻の葉をかたどった向い鶴柄の江戸小紋×金彩手描き更紗帯
「地味な色の小紋ですが、鮮やかなターコイズブルーの帯は洋の雰囲気で現代的な思い切った柄。」
「こんな帯を淡い無地っぽい紬に合わせるのも定番になっているけれど、江戸小紋に合わせると思いがけない味わいに。
伝統的な柄で、黒地の笹に宝尽くしの手描き友禅帯などを合わせれば古典的な風情に。」

▲右 高砂染め松葉柄の江戸小紋×金彩手描き更紗帯
「角通し小紋に松葉の柄を重ねて染められた着物は、立体感もあり、松の柄の正装感もある。
左のターコイズブルーの帯は現代的だったけれど、こちらはクラシックで品よくまとまる感じ。
小紋の柄をうまく利用して、リズム感のある柄の帯でさらっとまとめて軽い雰囲気に。
ちょいちょい着にして、楽しんで、たくさん着てほしい」と原さん。

▲左 菊唐草柄の江戸小紋×市松取りローケツ手描き格子柄帯
「おばあさんになってからも着たい色の着物。
濃い色のおめでたい柄の着物に大胆な柄の染め名古屋帯できっぱりとした風情。
ボーイッシュな人にかっこよく着てほしい。」

▲中 松竹梅柄の江戸小紋×市松取り手描き更紗帯
「こちらもおめでたい柄のみかん色の小紋。
帯の地色、市松に染められた花の柄の色合いのバランスが良く、この江戸小紋とあわせると格式張らず、品の良さが感じられる行儀の良い装いに。 濃い目の帯揚げでメリハリをつけても。」

▲右 牡丹柄の江戸小紋×帯屋捨松製織名古屋帯
こちらもクラシックで地味な色の着物。
「西洋の壁紙を思わせる織の名古屋帯とあわせると現代的な洋感覚になる。若い人が着るとむしろ古風な味がでるのも魅力。
帯揚げも紫系を合わせると前姿もすっきりと大げさにならない着物姿になりそう。」と原さん。

▲左 向い鶴菱柄の白地江戸小紋に織名古屋帯
無地に見えるほどごく淡いグレーで柄が染められた江戸小紋。
「白地に銀糸のはいった袋帯などを締めると格調高くなるけれど、織名古屋帯を合わせると派手過ぎず、ほどほどの華やかさで気楽に着られる。
金糸も目立たず、現代風にアレンジされて文様化されている花柄の帯はパステル調で、今の時期は濃い帯揚げ、薄いピンクの帯揚げなら春に向かっての装いに・・。」

▲中 丸に桐柄の江戸小紋×織名古屋帯
「グレーと同様にグリーン系も組み合わせがしやすい着物。
江戸小紋は白い点描の柄があるので着やすいし、帯もクリーム色で全体的におとなしめ。
こんな時、つい無難に白い帯揚げを合わせてしまいがちだけれど、上手に効かせる色を探してほしい。」とのこと。帯揚げを淡い色にするならば帯締めは濃い目の色ではっきりと。

▲右 鮫地に雪輪柄の江戸小紋×織名古屋帯
春っぽい色の古典的な柄の江戸小紋。雪輪は抽象化された柄なので季節を問いません。
帯は図案化された、絵本に出てきそうな木と葉の柄。
「どちらも淡い色の組み合わせだけれど、染めと織だから大丈夫。織帯の効果でしっとりとした着物姿になります。」
「同系色の帯揚げでふわっとまとめるのも良いし、濃い色を差し色にしてピシッとメリハリのある格好良さを目指すのも」

~原さんのお話 voL6に続きます
*織名古屋帯はすべて帯屋捨松製

vol.4

昨年夏に「浴衣を着て気分を変える」をテーマに新しい日常での浴衣の楽しみかたをご紹介いたしました。
2021年新しい年になりました。世の中の状況は残念ながらあまりかわっていません。
そこで「浴衣を着て気分を変える」に続いて、新しい日常、着物も気軽に着てみませんか?というご提案です。

今回、再びスタイリスト原由美子さんにお話しを伺いました。
コロナ禍、様々なイベントや茶席がなくなり、着物を着る機会が減ってしまったという声も聴きます。
そして、家にいる時間が長くなり、自宅で料理を楽しむ人が増え、様々な食材が売れているという話もあります。
着物を着てみたいと思う人たちが増えているのも確かなようです。
昭和の中頃まではいつもの生活で着物を着て、そのまま買い物に出ることも普通のことでした。
着物を着る機会を作ったり、行事に合わせて着ることももちろん大切ですが普段の生活の中でちょっと着物を着てみる、大げさにせず、
着物と洋服を上手に両立させた暮らしができたらよいな、原さんからそんなことをお聞きしつつ、着物と帯を選んでいただきました。

▲右 上代紬万筋小紋×琉球紅型名古屋帯
「昔だったらおばあさんの着物と言われるような色の地味な着物。
けれどこういう着物に憧れる若い人や、洋服感覚で着たいという人も多い。そんな時は帯を派手にして楽しむのが着物。」
ここで合わせた帯は琉球紅型の名古屋帯。
「紅型の色としてはモダンな赤で、牡丹の花の差し色も洗練されてこなれた印象。
例えば、ちょっとしたお招きを受けた時。あえて袋帯にせず、こんな名古屋帯を合わせると仰々しくなく招かれた喜びを表せる。」

▲左 紬地染唐桟縞小紋×琉球紅型名古屋帯
こちらも地味で粋な縞の着物。
「沢村貞子さんのような着慣れた感じにすることもできるけれど・・・」と前置きしながらあえて紅型の華やかな名古屋帯をあわせていただきました。
「博多帯などを合わせたらすごくかっこよいけれど、着慣れていないと少し不安・・という人もこの帯は地色のクリーム色が抑えめなのでこの縞の着物にもなじみやすいはず。
ちょいちょい着’にして着慣れてほしい。」とのこと。

紬地染唐桟縞小紋×江戸更紗帯
「紬地に染められた小紋は縮緬地よりもラフな印象。
若い人に白い半衿をきかせて着て出掛けてほしい。
にぎやかな柄の更紗帯と縞の着物は着回しも利いてかっこいい。
帯のタレの辛子色がメリハリをつけるので帯締めを辛子色であわせて後ろ姿で魅せることができる。また帯の中のグリーンや臙脂色にしても良いですね。」

江戸小紋あられ×江戸友禅名古屋帯
「洋服だとちょっと着られないけれど、着物なら着られる”赤”。これも白い半衿を意識して着てほしい。」
黒の染め帯は笹に宝尽くしのおめでたい柄。着物ならではの祝福気分を演出する楽しみがあります。
「古典的な着物は華やかさがあるけれど、こんな風に染帯をあわせるのも少し抑えめでかっこよい。」とのこと。

▲左 越後型着物×格子柄博多帯
越後型小紋は江戸小紋よりも大きな柄でカジュアルに着られます。
この着物はベージュの菊唐草模様に淡い差し色で柔らかい印象。
こういう柄のある着物はつい無地の帯をあわせがち。
そんな時、原さんのお勧めは織帯です。
「いろんな着方があるけれど、迷ったとき思い出すのは”染の着物に織の帯、織の着物に染の帯”という言葉。」
柄と柄がぶつかるときも織帯には立体感があるので着物の色や白で染め抜かれた柄を生き生きとさせることができるそうです。

▲右 越後型着物×博多帯
助六柄の博多帯は、例えば感染対策万全で開催中の歌舞伎に行くときに。
好きな役者にちなんだ帯をして観劇に行くことは、やっぱり着物を着るひそかな楽しみです。
この合わせ方は着物も帯も伝統的な柄でありながら今っぽい洋感覚になっていて「カフェに行くときや美術館で一人たたずんでいる姿も、きっと洋服でいるよりかっこいい。」

最近は着物に限らず洋服でも、あまり他人が着ているものを気にしない風潮があるようで着物を着て出かけて誰かにハッとみられることも案外少ないのかもしれない。
一人で粛々と着物を着てひそかに出かけてみて誰かに褒められたり、訪れた先で感謝されたりする“褒められ着物”に出会うチャンスを捜したいもの。
そうすればもっと着物が好きになるはずです。

~VOL.5へ続く

vol.3

特集の第三回目は、明治八年創業の鰻屋、高嶋家の若女将である鴛尾和佳子さんに登場していただきます。
高嶋家さんは竺仙のご近所さん。
鴛尾さんは毎日、着物姿でお客様をお迎えされています。
朝に着物を着て、昼営業が終わると洋服に着替え、夜営業の前にまた着物に着替えることが多いそうですが、デパートでの催事や日本橋でイベントがあると朝から一日中着物を着ている日も。
そんな日常を過ごされている鴛尾さんにお話を伺いました。

以前は、二部式の着物でお仕事をされていましたが、お客様に喜んでいただきたいという思いから、4年前に近所の着付け教室に数回通って学ばれました。
以来、毎日着物を着る生活を送られています。

2人の小学生のお母さんである鴛尾さんは、保護者会にも着物で出席されます。
お子さんたちは、着物や小物を選ぶ時にどちらが良いか聞いてみると、TPOに合わせてしっかりアドバイスしてくれるそうです。
一緒に公園へ遊びに来ることもあります。

美容院や歯科医院にもお着物で通われています。
着物での診察は大丈夫なのでしょうか。
歯医者さんのあの椅子に着物では帯が邪魔になってしまいそうですが…
先生にもお話を伺いましたが、特に問題はないと笑っていらっしゃいました。

撮影した日は梅雨真っただ中でした。
朝から降り続いていた雨が撮影直前に止みましたが、またいつ降り出してくるかわからないような空模様。
それでも気にせず傘を持ってスタスタ歩いていきます。

夏はゆかた姿でもお店に立たれるとのこと。
今日お召しの型絵染紅梅小紋もとてもよくお似合いです。

今回の撮影にあたっては、「縄跳びを子供に借りてゆかた姿で飛んでみましょうか」と、こちらがびっくりするようなご提案もして下さいました。
残念ながら縄跳びの写真は撮れませんでしたが、お茶目でとても自然体な鴛尾さんです。
ルールにとらわれずに、好きなものを自由に着て、どこへでも臆せずに出かける。
着物を着て、日常の当たり前のことをする。
鴛尾さんとお話をしていると、着物を着ることは特別なことではないのだと、改めて思いました。

まずは、ゆかたに着替えてみませんか。
「ゆかたで日常を楽しむ」ことは案外気軽にできることかもしれません。
変わらない一日が特別な一日になったり、何気なく過ごす時間が素敵な思い出になったり。
日々の暮らしの中にちょっとだけ「特別」をプラスすることで、楽しく過ごせるのではないでしょうか。
着るものを変えて、新しい景色を見つけましょう。

vol.2

引き続き原由美子さんのお話をご紹介いたします。
第二回目は原さんに竺仙にお越しいただき、反物を広げながら、今年の夏だからこそ、の場面を想定しながらゆかたと帯を選んで頂きました。
まずは『オンライン会議で着てみたいゆかた』です。

今年はリモートによる仕事が増えた方も多いことと思います。
今後も続きそうなこの状況・・・たまには趣向を変えてゆかたを着て会議をしてみる、というのはいかがでしょう。
相手には顔回りしか見えないところががポイントです。衿元の印象が重要になります。
選んで頂いた二枚は柄のない無地の部分が多い浴衣です。
衿は無地のところを意識して多く出るようにすると、衿元がすっきり見えて半衿がないゆかたを着ながらも、きちんとまとまった印象にすることができます。

「顔周りに大きな柄や差し色が目立つと遊びっぽいイメージになってしまいがち、この2点はそうでない感じ」と選んでいただきました。
長時間、椅子に腰かけて仕事をするには苦しくならない帯が良いかも、という訳で小千谷縮の兵児帯色は少し仕事モードの墨黒と白のを合わせました。
もう一枚選んでいただいた一番右のゆかたは、逆に無地場が少なく、萩の柄が全体に小紋調に染められています。 このゆかたは仕立てたとき衿に均等に柄が入るので着物っぽくも見えます。 「きちっとまじめな感じやキャリアを大切にしたい人向きです。」とおっしゃっていました。

『ゆかたを着て、おうちで食事』

飲食店のテイクアウトやお取り寄せ
様々なお店が趣向を凝らしたメニューを提供してくれて、利用する機会も増えた方もいらっしゃることでしょう。
そんなとき、ゆかたに着替えて気分を変えてみましょう。
左・リモート会議が終わって、ランチにフレンチをデリバリー
明るい青色の破れ七宝の綿絽ゆかた。「七宝の連続が幾何学模様っぽくモダンに見え、不思議とフレンチにも合いそう。」
仕事中とは帯だけかえて気分転換を。白地の琉球絣の半巾帯、ラタトゥイユこぼさないようにしなくちゃね・・・と原さん心配しておられました。
綿のゆかたはざぶざぶ洗えるので多少の汚れはきれいにできます。ゆかたを汚さないか心配ばかりしないで思い切り楽しみたいですね。
右・江戸好み白地、釘抜きの柄。こちらも和の伝統柄でありながら洋にも見える柄。
珍しいグリーンの色にちなんで、こちらはイタリアンをテイクアウトしたときに。
逆に、きっかり和の柄のゆかたにして気取ってみるのも良いかもしれません。

『印象の強い大きな柄のゆかたはこんな時に』

左の茶色地の瓢のゆかた
『男の人にぜひ着てもらいたいゆかた。家でくつろぐときは兵児帯で、出かけるときにはロートンの男帯で直線的にして』
右・コーマ地白地の露芝にほたる、風呂上りにこんな浴衣を着て細帯か兵児帯をあわせても。
『温泉の宿にきている感じも味わえたり、近所で蛍狩りできるようなところに住んでいる方がいたらよいのだけど・・・』
『大胆な柄の方が涼しげだから着てほしい、夕方二人で近所を散歩していたら相当目立つカップルになるかしら・・・』
風景が想像されて、見慣れた浴衣の柄がより一層味わい深く見えてきます。

『ちょっとお蕎麦屋さんへ行くときも、ゆかたを着るだけで特別なイベントに』

そしてこの夏、遠出はできないけれど、近所で楽しみを増やしたい・・
左・茶色の変わり輪繋ぎ柄のゆかたは男物の反物ですが、女性がこんな柄を着てふらりとお出かけするのも良いものです。
小紋柄なので名古屋帯にしたいところ、文庫結びだと違和感があるけれど紺地の琉球かすりの半巾帯を貝の口にして。
中・たてに蛇の目傘が並ぶ紺地のゆかたは遠目にも映えます。白地の琉球かすりの半巾帯を合わせて、 『‘夕焼けだんだん‘など歩くのはどうでしょう、どぜう屋さんの座敷に座った姿も”風景としてかっこいい”』

『より気分をアップさせたいおでかけに』

  • 奥州小紋、傘に撫子柄は顔写りも良さそうで、夕方の散歩や料理屋さんでの食事など 着物風にもきられる浴衣は気楽に使えます。
  • 原さんは踊りの初舞台の衣装が若草色の撫子の着物だったこともあって、撫子柄の着物をこだわってをさがしていたことがあったそうです。
    でも撫子は秋の花なので着物になっているものが意外に少なかったのだそうです。
    こちらの撫子柄は丸い花の形と横向きの本物っぽい花が混じり合ったデザインが面白い絹紅梅、ちょうど夏の着物がわりに着ることができるので良いと思う、との事。
  • たくさんの反物の中から選んでいる原さん。

商店街に行くときと駅ビルのお店に行くときは気分が違うはず・・・何を着ようかあれこれ想像するだけでも楽しい気分になるはずです。
コロナの状況で行動が限られてしまいがちな日々ですが、少し身の回りでできることを楽しんでみましょう。『浴衣を着て気分を変える』実践してみませんか?

今回 選んでいただいた竺仙の反物のほか、様々なゆかたの魅力満載の原由美子さんの近著
『原由美子の大人のゆかた きものはじめ』 CCCメディアハウス出版

vol.1

梅雨も明け、いよいよ夏本番ですね。
ゆかたでお出かけする機会が多い季節になりましたが、今年は花火大会やお祭りは中止、夏休みは短くなって、いつものような夏を過ごすことがなかなか難しい状況です。
でも、日々の暮らしの中に、ちょっとだけ「特別」をふやすことで、楽しく過ごせるのではないでしょうか。

お家でゆかたを着る。
それは数十年前にはよく見る風景でした。
商店街ではゆかたに前掛け、買い物かごを持ち下駄をはいた女性をよく見かけたものです。
日常の中で特別なものではなかったゆかた。
今日では、特別な日に着るカジュアルなおしゃれ着に昇格したゆかたですが、「ゆかたで日常を楽しむ」ことは案外気軽にできることかもしれません。
変わらない一日が特別な一日になったり、何気なく過ごす時間が素敵な思い出になったり、着るものを変えて新しい景色を見つけてみませんか。

そんな新しい日常のゆかたの楽しみ方について竺仙にゆかりのある方々にお話を伺いました。
第一回目はスタイリスト原由美子さん。
6月には雑誌フィガロジャポンに連載されていた『きもの暦』書籍化第3弾、ゆかたを中心に新しく構成された『原由美子の大人のゆかた きものはじめ』が出版されています。

まずは原さんのお宅に伺ってご自身の浴衣を見せていただきました。

真ん中のグレー地は竺仙の『流水に菊』の松煙染。
その両側の紺地の二枚は今はもう染められなくなってしまった両面柄違いの籠染ゆかた。
手前は島田純子氏デザインの綿絽ゆかた、学校の授業で縫った思い出のゆかたなど。

幼少の頃から日本舞踊でゆかたに親しんでいたという原さんの浴衣ざらいの時の写真です。
大学生の時、初めて自分で買ったというゆかたは『白地に束ね熨斗』

二十歳の頃に伝統的な柄のゆかたを選んだ、原さん好みが窺えます。

写真はメダカ柄の籠染ゆかたを着て着付けの本多恵子さんと食事に出かけたとき。
「この衿合わせは失敗・・・」とおっしゃっていましたが、博多献上の小袋帯をさらりと締めて自然な雰囲気が素敵です。

こんな風に気負わずに普段、ゆかたを着て楽しい時間を作る・・・
さらに今年ならではのゆかたのお話をたくさん伺いました。
~Vol.2につづく