1 浴衣も正絹も染工場は今が最盛期
「寒染め」は、染まりつきがよく発色もひと色違います。まだまだ寒さも残るとはいえ、草木も芽吹きはじめ、土に籠っていた虫たちもそろそろ地上に出てこようかというこの時期なると、穏やかに晴天が続くことが多いので染工場は最盛期。「引き染め」の工場では紅梅小紋や奥州小紋、そして「しごき染め」の工場では江戸小紋をはじめ秋冬物の正絹に取かっています。いずれも手のかかる技法だけに天候の安定も大切な要素となります。ごいただきました反物を早くお手元にお届けできるよう、晴天が続くことを祈って!左の写真は引き染めの現場より。
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2 「お揃い」の御誂えの季節
自然を愛でた江戸の人たちにとって桜は最大の楽しみ。江戸時代後期から現在のお花見のように大勢で酒食を楽しむようになったといいます。唄や三味線の師匠たちが弟子たちと揃いの着物を身に着けて遊山に出かける姿も浮世絵に描かれています。さすがに今では「お揃い」で花見、という光景はみられませんが、3月の声を聞くとお祭や踊りの会などお揃い浴衣の御誂えも増えて参ります。デザインから起こす場合は、型紙彫り、染め、お仕立てと2~3ヵ月弱のお時間がかかります。ご相談はお早めにどうぞ。〈お問い合わせ〉
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3 呉服の知恵①「更衣(ころもがえ)」
4月1日は更衣。江戸の頃には綿抜きといって、重陽の節句から綿を入れて着ていた着物から綿を抜いて袷に戻していました。今はまだ袷ですから、更衣といっても夏物に入れ替えというわけではありませんが、晴れた日には風を通してはいかがでしょう。寒い季節だからといっても、室内では暖房が効きすぎていたりで、汗染みなどができてしまっていることもあります。また、乾燥する秋冬には思いのほか塵や埃を吸い寄せていることも。風を通すと同時にブラシをかけたり、染み抜き、洗い張りに出すもの、クリーニングに出すものなどの仕分けを兼ねて、点検をしてみるのもよい季節かと思います。また、藍染めは「寝かす」とよくいわれます。染めたばかりの藍は、いってみれば生地の上に染料が乗っている状態。空気に触れることで酸化して、年月を経ながら生地に染み込み、そしてよい色合いになっていく......、これが藍染めです。ですから箪笥の中で「寝かせて」おくのではなく、是非、この機会に浴衣も風に当てて、育ててあげてください。
着たいときにすぐ着られる、気持ちよく着られるのが一番ですものね。